ワヘブログ

漫画を描いたり、良かった作品の感想を書きます。

100%恋愛視点から見たノルウェイの森

今更ながらですがノルウェイの森(小説)を読みました。
とても面白く一気読みし、その後ネット上で感想や解説を見たのですが
色々な意見があり、そちらもとても面白く読めました。
しかしながら自分と同じ考えを持った記事が見当たらなかったため
恥ずかしながら書かせていただきたいなと思います。
(もし似た意見をお持ちの方いらっしゃいましたら教えてください)

表題とおり恋愛観点から読み解きたいと思います。
ただ、私はよく訓練されたハルキストではなく読書量も多くないため当時の背景から見た深い考察などは出来ませんが、かなり俗っぽく、セックスの観点からみてみたいと思います。
物議のある「レイコとワタナベのセックス」や「最後主人公はどこにいるか」
に関してもこの点から説明します。

一つの意見として参考にしていただければ幸いです。

1.作品テーマ
 皆様に質問ですが作中主人公ワタナベが一番気持ちよかったセックスは
 誰とのセックスだったと思いますか?
 (いきなり俗っぽい質問でスミマセン)
 私としては間違いなくレイコとのセックスだと思います。
 そしてこれが恋愛ものとして切り取った場合のこの物語の根幹だと考えます。
 いやいや、直子とのセックスでしょ!と思う人もいるかもしれません。
 確かに直子とのセックスも良いものだったのですが理由は後述します。

 生と死がテーマだとか、最期のレイコとのセックスは必要か?
 という評論もいっぱいあるのですが
 僕としては「レイコとのセックス」が起承転結でいう「転」であり
 一番重要なエピソードだと思います。
 そこからテーマは何かを考えると「恋愛ってままならないものだよね」
 とか「恋愛の一方通行性、すれ違い」とかそういったところで
 一番俗っぽくいうと「本当に気持ちいいセックスって誰と出来るか分かんないよね」
 ってことが一番言いたいところでしょう。

 (本当に名作を俗っぽく言ってしまって申し訳ないです)
 私も途中までは生と死がテーマなんだろうなと思っていましたが
 レイコとのセックスの描写を見て、死は(重要なファクターだけれども)
 そのセックスをより鮮烈なものにさせる為のギミックや舞台の一部に過ぎないな

 と思いました。

2.ワタナベとレイコが何故セックスしたのか
 そもそも恋愛自体ロジカルなものじゃないので何故に対して「A.〇〇です」と
 言い切れるものではないのですが順を追って説明すると
 ・元々ワタナベはレイコに対して好感をもっていた
  (「シワが好き」等の発言から)
  もちろん、この時は直子や緑に対する感情と比べるとごくごく軽い気持ちです。
 ・レイコもワタナベに対して過去のレズ体験など性のコアな部分を
  話せるくらい心を開いていた。
 ・ただし、直子が生きている間はワタナベ、直子、レイコの3人の
  人間関係であったのでワタナベもレイコも直接お互いを2人の関係として
  意識することはなかった
 ・しかし直子が死に、二人で葬式を終え、ふと気付くと
  ワタナベとレイコの2人の関係となってしまった
 ・お互い悪くないと思っていたのでセックスをした。
  (飛躍があると感じるかと思いますが僕は男女なんてそんなもんだと思います)

 「不思議ですね。ぼくも思じこと考えてたんです。」というワタナベの発言。
 この時は本当に軽い気持ちでセックスがしたいと考えたのでしょう。

3.なぜ緑とセックスしなかったのか
 緑に対しては大切に思っており直子のことが整理つかない中で
 軽い気持ちでのセックスは出来ないという考えを持っていた…

 というのもそうですが、
 今まで直子とのセックスを神格化しすぎていたこともあると思います。
 もうちょっと想像を膨らますと

 直子とのセックス>>>>高校の時の彼女やその他の子とのセックス 緑=まだ謎

 だったのが

 直子とのセックス>>>>緑とのセックス>高校の時の彼女やその他の子とのセックス

 という順列になってしまうと直子を余計忘れることが
 出来なさそうだからその時ヤることにある種の恐れを抱いていたのではないかと思います。

 あと、緑とのセックスが良いのかどうかが分からないというところが物語のミソになってます。ここが分かってしまったら物語として葛藤する要素がなく、面白くないというのもあると思います。

 

4.レイコとのセックスがどういう意味をもったか
 結論からいうとめちゃくちゃ良かったんです。
 肉体的な相性も精神的な相性も。
 だって、そこそこ経験のあるワタナベが、
 最初の1回目は我慢できずに中だししちゃいましたし!
 その晩で4回も!ヤってるんですよ。
 軽い気持ちでヤったセックスが今まで神格化されてた直子とのセックスをはるかに

 凌駕する気持ちよさを持ってたんです。
 セックスする前はどうせ↓のような感じだろう
 
 直子とのセックス>>>>レイコとのセックス>高校の時の彼女やその他の子とのセックス 緑=まだ謎
 
 くらいだと思っていたのがまさか
 
 レイコとのセックス>>>>直子とのセックス>>>>高校の時の彼女やその他の子とのセックス 緑=まだ謎
 
 となってしまった!
 (想像していなかった次元にいきなりレイコがきてしまった)

 また、ワタナベは実は女性経験が多いように見えて
 今まで一晩で4回もヤルような相手とは出会えてはいなかったのではないでしょうか。
 今後その相手が緑となるはずだったのに、まさかレイコとやってしまった。

 私としてはこのセックスは「直子の代わりにセックスをした」でも
 「レイコが生に向かうための儀式」のでもなく、「やりたいからやった」
 「やったらかなり良かった」だけのそれ以上でもそれ以下でもないと思っています。

 繰り返しになりますが緑とのセックスを保留していたワタナベは
 レイコとのセックスが予想以上に良く、このセックスを些事として流すはずが
 大きな意味を持ってしまったため、余計に悩むことになったということです。

5.主人公はどこにいってしまったか
 直子の死から落ち着いたあとはワタナベは緑との関係を作っていくはずだったのに
 
 レイコとのセックス>>>>直子とのセックス>>>>高校の時の彼女やその他の子とのセックス 緑=まだ謎
 
 という状態になってしまった。
 ちょっと前には

 直子とのセックス>>>>高校の時の彼女やその他の子とのセックス 緑=まだ謎

 という状態の中でどこに緑が入ってくるか分からなくて混乱している状態だったのに
 さらにレイコが入り込んで来てもっと混乱してしまった。

 そこに緑からの「あなたはどこにいるの?」という質問を
 本当は緑とどうなりたいのか、核心を突く質問をされているように混同し
 本当はどうなりたいのか分からない=上記の順列の中のどこに緑が入るか分からない=どこにいるか分からない
 と返事をしたのだと思います。

 まぁ無理に順列で考える必要もなく、今後緑と付き合ったとしても(よっぽど緑とのセックスが良くなり限りは)
 ワタナベはレイコのことは忘れられないでしょう。

 ということで物理的には上野付近なんですが精神的には全然分からない場所にワープしてしまった。
 という現れなんでしょう。
 
6.直子とのセックス
 直子にとってワタナベとのセックスは「浮気」「イケナイコト」の位置づけだったのではないかと思います。
 「その時は濡れた」とあり、その後の阿美寮では「濡れなかった」
 これはセックスをした当時はワタナベを付き合う相手として考えていなかった
 (半身はその当時でもキズキであった)が本来しないような相手とのセックスを想像し
 イケナイコトをすると余計興奮するというような理屈で濡れたんだと思います。
 その後阿美寮で夜中に直子が寝ているワタナベの前で裸体になったという記述がありましたが
 ワタナベを付き合う相手として考えたときに濡れるかを確認した行為ではないかと考えます。
 (=結果濡れなかった)
 直子はワタナベを彼氏として考えたときに濡れないことに絶望しそれが彼女の自殺の一因になったのではとも思います。

 このようにワタナベが自身の中で神格化した直子とのセックスはすごく気持ちの良いものだったんだけど
 実は双方向のセックスではなかったというところでしょうか。


7.言いたいこと
 恋愛はままならない(思った通りに行かない)
 うまく順序通りには行きませんよっていうことが言いたいのではないでしょうか。
 順序通りというのは
 ①思春期に人を好きになり
 ②付き合うようになり
 ③初めてセックスをして
 ④大学生で怠惰な性を謳歌
 ⑤就職して真面目な付き合いをして結婚し
 ⑥職場の先輩や後輩と不倫する
 というような順序のことです。
 直子は思春期をすっ飛ばして②と③の間のキズキとペッティングまでしてましたし
 ワタナベは大団円で緑と④を謳歌すると思いきや一気にレイコと⑥に近い経験をしてしまった。
 (これが最後に自分がどこにいるか分からないという表現なのだと思います)
 このような経験が人生において順序よくやってくるのではなく
 いきなりお構いなしにやってくる。
 だから悩むよなぁってことでしょう。

 もひとつ、あなたとそういうことを経験する人は大事に思ってる人ではなく、思いもしなかった人かも。ということ。
 一晩に4回も生でセックスするような相手は実はあなたの恋焦がれているその人では無く
 その隣の友人かもしれません。

8.感想
 レイコが昔のことをワタナベに話していた時点でセックスしそうだなぁとは思ったんです。
 ただそのシーンはずっと来なかったし最後の方でレイコが訪問してきたときに少しは「お?」
 と思ったんですが叔母として訪ねてきたと家主に説明したり二人での葬式をやったあたり
 最後の尺があまりないので「もうセックスはないな」と思ったんですよ。
 そしたら最後の最後でしてやられましたね。
 しかもその描写(レイコが笑うと振動がペニスに伝わる等)には感動しました。
 同時にこんなにいい作品を何故もっと早く読まなかったのかと思いました。

 またワタナベはマイルスを聞いてるのでもしかしたら電気マイルスもかけるかなぁと思ったのですが
 1969年ですね。まだアガルタとか無い時代なんですね。
 舞台がもうあと2年くらい先だったらどこかでツェッペリンの天国への階段とかが流れてたかもしれませんね。

 あと、1969年前後のラブホテルにコンドームがあるのかが気になりますね。
 ゴムをつける描写が見当たりません(ありましたっけ?)ので当時はみんな
 生でセックスしてたのでしょうか。
 うらやましい?ですね。

 まあ実は主人公と私の苗字が同じということもあり妙に感情移入してしまいました。
 俺がワタナベだったら絶対こんなこと考えてるよなってエントリになってます。